名横綱が証明した、自力で怪我を治す力

かつて、「土俵の怪我は土俵の砂で治していくんですよ」と云う名言を、戦後の名横綱、初代若乃花は残しました。

この言葉は安易な根性論的な思考から出た、思慮の浅い発言などでは決してありません。

 

怪我をしようともガムシャラに稽古を重ねて土俵を務める道を、ひたすら歩み続け、それで本当に怪我を治して強くなっていったと云う、確かな実績に裏打ちされた実体験が背景にあったから、自然と本人の口から出て来れた金言なのです。

そういった重さがあるからこそ、この言葉は今に至るまで相撲界にて生き続けています。

 

そしてこの逸話は、自然治癒力が大いに働いた事例としての、解釈もできるのです。

怪我をしているのに体を痛めつけるなんて、一見無謀な行為にしか思えませんが、一心不乱に稽古場や本場所に、集中をしていれば、思考の方は前向きでいられます。

逆に休んでいたほうが、怪我の回復具合や自分の行く末などを気にするようになり、不安に支配されてしまいがちなのです。

ですので、思考にそんな隙を与えないよう、努力と工夫によって出来るべきことを懸命にこなし、情熱を燃やすことによって、身体的に鍛えられるだけでなく、知恵や胆力、勝負勘といったものも身についていきます。

さらに、精神面が強固になり、心のポジティブな面がブレにくくなったことで、自然治癒力は次から次へとどんどん発揮できるようになったのです。

 

これが、初代若乃花が困難を乗り越えて、大活躍できた何よりの理由です。

ですので、程度の差はあるにせよ、怪我をした時は、治療と養生にばかり専念していないで、やってると前向きになれるような何かをを、何とか工夫してあえてやってみて、そしてひたすら取り組んでゆくと、思考が前向きになるだけでなく、怪我自体にも好ましい結果をもたらすことになるのです。

 

それにしてもこの話、人の自然治癒力を活かすことを生業としている我々に、ヒントを与えてくださっているようにも思えます。

悪い箇所があるのに、あえて体を苛め抜いて良くしていく。

整体と云う技術のこれからの、何か重要な鍵になるエピソードなのかも知れません。